家の設計監督がアパートで初めて一人暮らしをはじめた

暮らし

3年前の夏、私はひとり暮らしを始めた。
実家から車で15分のところ、築30年のアパート。
これまでずっと実家暮らしだった私が、なぜひとり暮らしを始めたのかという話をしようと思う。

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家の設計監督が一人暮らしをはじめたきっかけ

きっかけは今の勤める会社だった。
私は、工務店で設計監督として家を作る仕事をしている。
地元の木を使った自然素材の家の心地良さを、設計・提案していく中で、次第に自分の仕事が「家を作る」仕事から「暮らしを提案する」仕事なんじゃないか、と思うようになった。
このキッチンでどんな料理を作りたいのか。
この窓からどんな景色を見たいのか。
ここにはどんなものを収納するのか。
など、暮らし方のより具体的なイメージをしながら設計することで、居心地の良い家ができていく。
設計者は、その具体的なイメージをお客さんに想像してもらう、またはお客さんの頭の中にある暮らしの理想像を引き出すという技術が必要である。建築知識だけでは不十分で、あらゆる分野に興味を持ったり、アンテナをはることで、提案の幅を広げられると私は考える。

もともと実家暮らしの私は、社会人になっても、お母さんに毎日お弁当を作ってもらうような、家ではまるで何もしない娘で、仕事が終わって帰るときに「今から帰るよ」のLINEを送ると、家に着くと同時にお母さんが夕飯を出してきてくれる。食べ終わるとスッと器が下がり、「お風呂入っちゃいな」と風呂場に向かうと温まった湯舟が私を待っている。風呂上りにはアイスを食べて、隣の部屋にはすでに布団が敷かれており、歯を磨けばもう寝るばかり…そして翌朝目覚めると、朝ごはんとお弁当が用意されている…。

至れり尽くせりの暮らしだなと思ったことでしょう。いや、でも本当にその通りで、今思えば最高すぎる暮らしをさせてもらっていた。
だからお母さんには感謝しかない反面、どこか不自由にも感じていた
姉妹が多かったこともあり昔から自分の部屋というものはなかったし、家には必ず誰かがいて、ひとりの時間もひとりの空間もほとんどなかったから、人に暮らしを提案していると、「好きなものに囲まれた暮らしっていいよな」と思うことが多かった。普段の仕事から、十分過ぎるくらいの暮らしのイメージがあったし、物件の良し悪しや暮らしのツール情報なども人より詳しい。

人に与えてもらった居場所で暮らすことは確かに楽だし、実家暮らしなら貯金もできる。
自分で1から居場所を作るよりこのままの方がメリットは多いかもしれない。
でも、楽より「自分のしたい」を形にしてみるのも人生面白いかもしれない。これは仕事にも繋がることだと思い、ひとり暮らしを真剣に考え始めたわけ。

初めての一人暮らしで身についたスキルと生活の変化

自分の理想の物件探しや部屋づくりがシンプルに愉しかった。
貯金は減ったし、仕事をしながらの家事は大変ではあるけど、代わりに自分だけの居心地の良い居場所ができて、また、「自分ができること」というものがかなり増えた。

特に料理。お湯を淹れるだけのカップラーメンくらいしか作れなかった私が(あ、いや待てよ?カップラーメンは料理ですらないか…)今や、毎日自炊をしている。
「今日はシチューが食べたいな。余ったらクラムチャウダーにしちゃおう」とか
「卵と牛乳が残ってる、プリンでも作って明日会社に持っていこう」とか
以前の私ならやりもしなかったことを今は愉しんでやれている。
でも決して得意かと聞かれたらそうではないかもしれない。同じものを作るとしても、自分が今これを食べたいと思って作ってるから愉しいと思えるのであって、作れと言われて作る料理は愉しくない。自分のためだけにやっていることだからこその贅沢だとも思う。

ひとり暮らしだから、どうしてもやらなきゃいけないことは実家にいるときより明らかに多い。代わりにやってくれる人はいないのだから。
だからこそ、何事も愉しんでやれることが、豊かな暮らしをし続けられる秘訣だと思っている。
もちろん、仕事で疲れて家事をする気になれないときもあるし、風邪で寝込んで何もできないときもある。
嫌なことがあって何も手につかないときもあるけど、そういうときがあることも許容してあげるのは大事だし、そんなときは、好きな香りの入浴剤を入れたお風呂にゆっくり浸かる。
好きな音楽聞を聴きながら、時間なんて気にせず深夜でも構わずポテトチップス食べればいい。掃除も洗濯も明日やればいい。
できるとき、やる気のあるときにやる。
私はそうやってひとり暮らしを続けている。

家の設計監督が初めての一人暮らしで初めて気づいたこと

暮らしは自分の在り方にとても大きな影響を与えているということ
家にいる時間は人生の中で最も時間を過ごす場所とも言われ、1年のうち実に244日は家にいる時間という調べがあるように、家という居場所は大事に考えるべきだと私は思う。
部屋の乱れは心の乱れともよく言ったものだが、本当にそう思う。逆に部屋が整っていると、何だか気持ちが穏やかで心の余裕さえ生まれる。

暮らし方は人それぞれだし、正解も不正解もない。別に部屋がオシャレじゃなくたって、生活はしていける。でも、その居場所が自分にとって心地良い環境になれば、きっと気持ちや思考、アクションだって変わってくる。自分の暮らしを通して、色々な気付きや発見、学びがある。

今はこのリアルタイムな経験も踏まえて、暮らしの提案が仕事になっている。それを自分の会社に来るお客さんだけでなく多くの人に伝えたいとも思っている。暮らしの質が人生の質を変えると言っても過言ではないと私は思って、毎日愉しく暮らしている。

著者
TOM
出身:静岡
学歴:高卒
職歴:建設業
趣味:ギター、着物、カメラ

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