介護職 やめたいけれどやめられない

介護業仕事

お年寄りは苦手、人のお世話も好きではなかった私。かれこれ20年ほど、非常勤ですが介護職を続けています
万年人手不足の介護職。つらいことも多いですが、楽しいこともあります。
自身の介護職体験を綴っていきます。

スポンサーリンク

ピアノ弾きになりたかった

29歳の秋ごろ、煮詰まっていました。1歳の子供を保育園に預けて、チラシ配りのパートをする毎日。高卒、無資格。そんな私。
かつては、フリーターをしながらピアノレッスンに通っていました。ホテルラウンジでピアノを奏でる仕事。そのような仕事に就きたかったのです。
努力不足。そして実力もなかったのでしょう。音大も出ておらず。その夢は叶うことがありませんでした。でも、まだチャンスはある。なんて思う日々。レッスンは辞めていましたがピアノは毎日のように弾いていました。

ある日のこと。子供と2人、戯れていると、関西に住む友人から電話がありました。
同年代の彼女とは、20代前半に知り合いました。ダンサーを目指して上京していた彼女。夢を持つ者同士、意気投合。しかし、盟友は夢を諦めて関西へと帰ってしまいました。
久しぶりの電話に話が盛り上がります。
「そうそう。今ね、ヘルパーの資格取ってデイサービスで働いているの。楽しいのよ、これが。」
彼女の声が電話口で踊っています。実は、ホームヘルパーの資格は以前から気になっていました。
介護職には興味はなかったです。そもそも、身近にいるお年寄り、実の祖父母とは仲が良くありませんでした。高齢者はわがままなイメージでした。
しかしながら、お金も時間もそれほどかからず、比較的取りやすい資格。手に職を付けたいな。簡単に取れるから、いつか取ろうかなあ。くらいには思っていました。
「あなたもホームヘルパーの資格取ってみたら?」
彼女のススメで乗り気になってきました。
介護職、チラシ配りよりはいいかなあ。
そんな軽い気持ちで、ホームヘルパー2級講座を申し込みました。

鬱になった

ホームヘルパー2級講座は、講義を受けることで簡単に取ることができます
期間も短く、半年もかからなかったと思います。
それでも、初めて仕事に繋がる資格というものを手にして気分が高揚していました。

さて、就職活動。
介護職。とひとことで言っても色々な業種があります。施設、デイサービス、訪問介護、などなど。
そんな中で、訪問介護を選びました。融通が効くと思ったからです。
子供がまだ2歳だったのと、実はこの時点でもピアノを弾く仕事を諦めていなかったのです。練習の時間が取れるかなと考えていました。

近くの訪問介護事業所での勤務が、すぐに決まりました。
最初の訪問は、今でもよく覚えています。先輩ヘルパーさんと同行訪問をしました。一人暮らしの80代の男性宅へ。調理と掃除で1時間です。
てっきり、最後までいてくれると思っていた先輩ヘルパーさん。
「ごめん。次の仕事があるから、あと宜しくね。」
30分ほどで、出て行ってしまいました。
さて、困った。初めての業務です。とても不安でした。
ただ、その訪問先の利用者さんが穏やかだったので、不器用ながらも業務を終えることができました。1人でできたことが自信につながりました。この仕事なら続けられる。思ったより楽しいという印象となったのです。

初めての事業所は3年続きました。元々、1人でマイペースでやる仕事が好きでした。介護職が合っているというよりも、そんな働き方が合っていたようです。
しかし、慣れてくると難しい利用者さんに当たることもしばしば。「あなたの顔を見たくない。」と言われたり、ちょっとしたハラスメントなんかもあり。とうとう鬱になってしまい、辞めることになりました。もう二度と介護職はしないと決めて。

スポンサーリンク

音楽レクで夢かなう?

介護職から離れ、またチラシ配布をしていました。
しかし1年ほど過ぎ、また介護職がやりたくなってきました。チラシ配布中に怒られることが多く、感謝される仕事をやりたくなったのです。
アットホームな職場と書いてある求人を見て、以前とは別の訪問介護事業所に面接を受けに行きました。即採用。そして、本当にアットホームな職場でした。
小さな事業所だったせいか、女社長も一緒に働いています。お昼ご飯は、その女社長が作ってくれ、みんなで食べました。スタッフの悩みにも親身になってくれました。「みんなが頑張って働いているから、この会社は成り立っている。」
と常日頃から話していました。利用者さんの理不尽な要求にも、ビシッと対応をしてくれました。
そこでは10年勤務をしました。後にも先にも、この社長を超える上司は現れないと断言します。

その後、子供も大きくなり、デイサービスへと転職をします。訪問介護とは、全く違うものでした。新しいデイサービスだったので、とてもきれい。きれいな場所で仕事ができることはよかったです。訪問介護は、まあ、色々なお宅がありましたので。
仕事内容も大きく変わりました。入浴目的の利用者さんが多く、何人もの高齢者さんを限られた時間で入浴させるのは大変でした。タイマーで3分セット。タイマーが鳴ったら湯船から上がってもらう。
訪問介護の時は、30分入っていた方もいて、違和感を覚えました。しかし、時間との戦いのデイサービスです。慣れてくると、なんとも感じなくなりました。
ここでは、初めて音楽のレクリエーションを行いました。自前のキーボードを持参して、伴奏をし、利用者さんに歌を歌ってもらいます。高齢者さん、さっきの話は忘れても昔の歌はよく覚えているものです。そして、みんないい顔。とても有意義な時間でした。
ピアノ弾きになる夢は諦めていましたが、かなったような気がしました。

まだまだ続くよ

音楽レクリエーションが楽しかったデイサービスですが、経営難で閉鎖になってしまいました。実は、職場の人間関係は良くなかった。閉鎖と聞いて少しホッとしていた自分もいました。

その後、家族の体調不良もあり、短時間で入浴介助だけという仕事にありつきました。
老人ホームでの入浴介助です。
施設での仕事は初めてでした。利用者さんのお住まいなのだけど、施設の設備は働いているスタッフの方が詳しい。何とも不思議な空間です。
そして口々に
「こんなとこに入るはずなかった。」
と言う利用者さん。やりきれない気持ちになります。
ここに来てやっと、利用者さんに寄り添う気持ちが生まれてきました
それでも、お風呂からあがると、みなさん笑顔になるのですよ。

鬱になった訪問介護。微妙に夢がかなったようなデイサービス。そして今、勤めている老人ホーム。
なんだかんだで続けてきました、介護職。
その間、介護福祉士、ケアマネジャーの資格も取得しました。
ピアノ弾きの夢ですが、ホテルでの演奏者になることは諦めました。
今は、高齢者施設など、ボランティアで弾きに行けたら、と懐メロや童謡を練習中です。

人間、誰しも歳を取ります。寿命は誰にも分かりません。長生きしたくなくてもする人もいる。

今現在、この仕事が完全に好きなわけではありません。
でも、なぜか続けている。
何とも言えない魅力があるのでしょう。

この記事を書いた人

スヌ
出身地:東京
学歴:高校卒業
職歴:運送業、介護職
趣味:ピアノ、読書、ゴスペル合唱

スポンサーリンク

コメント